山下晃明のブラジルで損せぬ法(259)

『実業のブラジル』誌に好評連載中(2009年7月号


 
 
外資依存のブラジルの株価


 先月号の「ブラジルの株価回復は本物か」を分析していて興味ある関連項目を発見したので読者には特別にお教えする。
 中銀の公表する(Estoque de Carteira de ativos de investimentos estrangeiros)とBOVESPA指数が連動している。片や外国人が株式を購入した金額の残高統計で(単位百万ドル)と一方は株価指数で、なぜ相関関係があるのかはわからないが、グラフにすると、とにかくきれいに連動している。 
普通、相場経済の動向は2ヶ月も経過すると人為的に変化されるもので、かくも長期に相関関係を示すデータにはお眼にかかったことがない。

グラフを信用しない人のために、米国発金融ショックの昨年9月から今年3月までの倍率を見てみよう。どうですか。まるで誰かが外国人投資残高を見てBOVESPA指数を算出しているかのようである。

 

外国人投資残高

BOVESPA 

倍率

Sep-08

172213

50742

3.4

Oct-08

124090

37447

3.3

Nov-08

115672

36470

3.2

Dec-08

123089

37069

3.3

Jan-09

134587

39636

3.4

Feb-09

122068

38177

3.2

Mar-09

130897

41062

3.2

Apr-09

152290

47235

3.2

これで分かるのは、もちろん単純に決めつけてはいけないが、今のブラジルの株価を上げ下げしている原因として、外貨の流出入の影響が極めて強く、もし外資が一斉に引き上げたら株価が暴落する可能性があるということになる。(株式に投資している人はこれを使用すると儲かるかもしれませんよ。儲かったらコニャック一杯です。ただし損しても責任はもちません、念のため)
 外貨が株に影響を与えるのであれば、当然為替レートにも影響を与える筈である。そこで為替レートと貿易以外の外貨の流出入残高を比較してみると政府が意図しない突然の流出が起きたときの2-3ヶ月間は明らかに逆相関関係が見られる。
 外貨の流入出の状況は貿易・サービス収支と資本収支の合計収支動向で判断されるのが普通だが、それは国に一つしか銀行が無くて、そこですべての為替が月末の同じ日に決済される場合の話しであって、実際は通常の貿易取引と株式や金融投機のための外貨は別の銀行で別の日に売買されるもので、短期に高額の投機資金が流出入すると、それにより為替相場が動くと見るべきであろう。ただし為替は中銀など多くの監督機関が見守っているから、今回のような米国発の金融ショックによる突然の大量外貨流出でも2〜3ヶ月すれば人為的に政策調整される。

 先月号でふれた経験則、現在20億ドルの突然の流出があると為替レートがR$0.27ほど上がる傾向が上記グラフである。
 金融為替取引の今後の予想は、貿易為替収支が黒字を保ち極端な黒字や赤字にならないものと仮定して、極端にの収支が動くと当然為替も動く、ブラジルの子会社が利益を出し始めると、不況とレアル安で止まっていた親会社への利益送金が再開し流出が増えるだろう。またレアル安と金利高のため確定金利付証券への外国投資家からの資金流入が増えるだろう。
 差し引き大きな変動がなければ為替もあまり動かず、今後も金融市場為替の流出入残高の推移を見守る必要がある。

 ブラジルの5月の失業率8.8%

 参考まで、米国の失業率は6月で9.5%とのことで、2007年末の4.9%の約2倍であり過去28年間の最高値である。金融ショック以後に増えた失業者数が650万人で失業者合計1470万人とのことである。
 ヨーロッパもユーロ圏で5月の失業率が9.5%で過去10年間の最高値で過去1年間に340万人が失業したとのことである。
 国のGDPは給料、家賃、利子、利益の総和であるから、失業者が増えることは給料の総和の下げになりGDPを下げることになる。
 ただし給料を全国民に同じ額を払うよりは、生産(利益)を上げる才のある人に多く払う方が、国のGDPは高くなるものであり、給与総額が上がれば失業者が増えても関係ないことになるが、といって失業率が7%を越えると、平均家族数を5人として両隣の誰かが失業していることを意味し、社会不安になるだろう。大衆消費財やサービスの売りも下がるが、窃盗、強盗などの犯罪も増えることになる。 
 やはり失業率は数パーセント以下にまで下げるべきであろうし、ブラジルの場合も昨年末の6.8%まで下がらねば回復とはいえないと思われる。

 PAC(経済成長加速計画)

 2010年までに総額6460億レアイス(3200億ドル)を投資し2014年までに完成予定の41件の計画で、GMの2年分の売上げ規模だが、種々の問題があって一向に進んでいない。 
 ベージャ誌によると今まで3.5%の225億レアイスが払われただけで、完成したのはペトロブラスの石油プラット・フォームP-52の1件のみ、今年中の完成はウルク・コアリー・マナウス間の661kmのガス・パイプ・ライン、今の出資傾向で1年以内に完成は、南北鉄道の北部分719km、リオ・グランデ港、ペトロブラスのP-53、P-51、ベロ・オリゾンテの地下鉄6.6kmの5件のみ、2年以内に完成は東北泊のBR-101街道、ツクルイ・ダム2箇所、バイア-エスピリット・サント間の954kmのガス・パイプ・ライン、エストレイトの1087メガ・ワットの水力発電所、サルバドールの郊外列車鉄道13.5kmの5件のみで後の29件は2010までの完成は無理で、まだ開始もしていないものや10年以上かかるものが、22件もある。
 PACは政府主導の民間投資を刺激する計画で、大半は民間投資の計画であるが、金融危機で企業の資金獲得が困難の上、政府側の環境ライセンスの審議の遅れ、法的問題による競売の遅れ、連邦会計検査院会計検査院の予算審議の遅れなどで、前途多難である。

 豚フル累積感染者11万人を突破

 世界の累積感染者数11万を超え、ブラジルでも感染者1000人を越え死者2名となったが、冬の南半球各国で増え続けており、引き続き注意が必要である。
 1918年のスペインかぜでは感染者6億人、死者4〜5000万人とされる。当時の地球人口が18億人で世界人口の3割が感染したことになる。
 その後も地球人口は増え続け現在67億人、2011年には70億人、2050年には確実に90億人を越えるということである。
 90億人となった場合、世界第2の工業国である日本でもせいぜい人口1億人であるから、年間に世界で増える人口に対しては、日本はおろかG8全体でも、とても面倒を見切れずお手上げになるだろう。
 一体地球号の定員は何名だろうかと言い出す友人がいた。地球には無限に人が住めるわけではなく、有限だろう。食糧生産、水汚染、大気汚染、スペースなど全部を勘案して、科学的な根拠によりこれ以上住めないという上限の数字が出たらどうなるだろうか。何10億人も月や火星に移住させることは不可能であろう。ではどうするのか。国別に人口を割り当てるのか。
 先のG8での温室効果ガス削減の問題も煎じ詰めれば、地球人口割り当てと同じ性質の問題である。温室効果ガス削減は、即実行の必要があるのに、途上国のどこも削減に協力しないのであるから、当然将来の人口制限も認めないであろう。
なれば人類は大量発生したバッタのように滅亡するか、新ケインズが出現して食糧や資源の均等配給制になるのか、戦争など力で相手を従わすことになるのか。その意味での未来は絶対に現在の延長線上ではない。